Handspring VisorをWindows10で同期

ネットにもつながる高画質ディスプレイ、パワフルなCPUなスマートホンを毎日使ってますが、西暦2000年前後ネットにもつながらないモノクロ、貧弱なCPUでも快適なガジェット(ハンドヘルドデバイス)がありました。

US Robotics と 3com がリリースした PDA(パーソナル データ アシスタント) Palm
今回は、この Palm OS で低コストで独自のバスを搭載したガジェット Handspring社 の Visor を Windows10 64bit環境で同期(Hot-Sync)してみました。

※)この記事を読んでる方に Palm が何かを説明するのは、蛇足かもしれませんが…念のため。

Handspring Visor(Palm OS 3.1)

Palmの開発者が新しく立ち上げた Handspring社で発売された Palm OS搭載のハンドヘルドデバイス Visor。
独自の拡張スロットSpringboard(スプリングボード)を搭載した製品です。

Springboard のコネクタは、68pinで実際には PCMCIA のコネクタピッチと互換がありました。
ピンアサインは異なりますが、マイク端子が直接でていたり、データラインで双方向のやりとりができたので、GPSユニットやバックアップモジュールなども発売されていました。

VisorのUSB接続クレードルは、それまでのPalmのシリアル通信ではなくUSBのデータ(USB+/-)が直接出ていましたので、高速に同期(Hot-Sync)ができたのも魅力です。

Windows 10 で同期してみる

この Visor を Windows10 で使えるように環境を整えました。
手元には Visor 本体があったのですが、母艦となるWindowsやMac,Linuxと同期するための USBクレードルがありませんでした。
たまたまメルカリで、出品されている方から USBクレードルを譲ってもらったのが今回の発端です。

Palm Desktop環境を整える

母艦と同期するための Palm Desktop や Windows10 64bit環境で同期するためのドライバは、PalmDBという海外のサイトで入手できます。

PalmDB には、PalmDesktop の他に、プログラミング環境の 「Metrowerks Codewarrior」 や 「NSBasic IDE」なども配布されています。
今回は、NSBasic IDE(Github)も一緒にダウンロードして、環境を構築しました。

palm Desktop は、PalmOS 4以降をサポートする Ver.6 も配布されていますが、Visor のOSは、Palm OS 3.1ですので、Palm Desktop 4.1 を使用します。

palm Desktopで日本語フォントを指定する

Palm Deaktop Ver.4.1 は、英語フォントが標準で指定されているので、そのままでは日本語データの表示で文字化けします。
メモやカレンダーの日本語データを表示するには、Palm Desktop の レジストリ データベース を変更します。

Palm Desktop レジストリで日本語フォントを指定

変更するレジストリは、以下の4項目です。英語フォントが指定されていますが、今回は「メイリオ」を指定しました。

  • FontCard
  • FontGeneral
  • FontSmall
  • FontUser

上のレジストリを変更して Palm Desktop を再起動すると、日本語のメモやアドレス帳、カレンダーの表示が日本語対応になります。
メニューは、英語の表示のままですが利用上は問題ありません。

Palm Desktop 日本語フォントを設定してVisorのデータを同期

お手軽な開発環境: NSBasic IDE

Visorの同期ができたので、ついでに開発環境である NSBasic IDEもインストールして環境を作りました。

PalmのアプリをBASICで開発できる NSBasic IDE

June 18, 2021 にオープンソースで Github でソースコードも公開されています。
NSBasic IDEの機能すべてと、Palm OS エミュレータも動作するので、実機に転送せずに開発もできます。

Palm OSってナニ? とりあえず動いているところをみてみたいと言う場合には、NSBasic IDEはお手軽で良い環境です。

Zen of Palm : シンプルな使いかって

なぜ今回 古くてネットにもつながらない Palm Visor を復活させたかというと「Zen Of Palm」の再確認のためです。
「Zen Of Palm」は、Palm の機能ではありません。

Palm OS ハンドヘルドデバイスの操作感、使用感、アプリケーションの設計に関しての文章です。
原文と 日本語訳のリンクは、以下のリンクをたどってください。

アプリケーションやシステムの開発をしていますが、最近のデバイスは非常に高性能で色々なことができます。
反面 開発者は「ナニを実現して、ナニを実装しないのか」を考えないと「色々なことができるが、ユーザーはどう使ったら良いか判らない(何もできない)」ことが発生します。
当然、プロダクトのコンセプトも、使う人に伝わりにくくなりブレブレになってきます。

Zen of Palm によって開発された Visor で再確認したかったのは、この「なんでもできる」は「何もできない」のと同じになりがちなスマートホンやアプリの開発のスタイルに対しての確認でした。

Handspring社はすでに無くなっており、Palm OSの開発も止まってしまっていますが、この Zen of Palm という考え方は、リッチコンテンツを扱えるようになった今からの課題になるような気がします。

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